土壁の家というと、時代劇?昔の家?というイメージがありますよね。スピーディーに建てられ、性能もいい新しい建材がたくさんあるのに、今さらなんで土壁?と思うかもしれませんが、飛鳥、平安の頃から培われ、現代まで工夫が凝らされてきた土壁の家は、いまの時代だからこそのサスティナブル(持続可能)な素材なのです。稲作の田んぼにある土を使います。壁土は発酵、微生物が作る素材なので、無農薬の土地の土でないと、だめなのです。なので、環境にも人にも優しい素材ということになるのです。
前回紹介した、土壁の家の建築時の様子を見ていただいて、土壁について説明していきます。
人と環境に優しい現代の土壁の家
土壁の家は、伝統構法、伝統的な建築様式とセットでなければ、効果が出ない日本の伝統の技を引き継ぐ大工だからこその建築です。基本、木を釘は使わず継ぎ手、仕口を複雑に組み合わせて作る、柔構造の建物だからこそ、地震や災害の多い私たちの国に合う建物出来上がるのです。
再利用可・土に還る壁土
津波や大震災があると、家が壊され、廃棄物が大量に発生します。災害で家が壊れた時、その多くが処分に困る産業廃棄物となります。実は新建材の多くは石油系の溶剤が多用されているので、埋め立てて廃棄できない危険物として扱われます。その点、自然の土と藁束を使う壁土、基本的な伝統的な家づくりの柱や梁などの材木は土に帰る部材を使っています。なので、再利用可能・持続可能、サスティナブルな時代にマッチした家づくりなのです。
現代技術とハイブリッドな土壁
現代の土壁の家は、妻壁や土壁の外側に断熱材を貼り、下板を敷いた後、左官職人がモルタルで家を守ります。土だから、断熱性に優れていると思われるかもしれませんが、実は壁土は断熱性能は低く、蓄熱性が優れています。なので、土壁・空気層・断熱材・下地・モルタルと断熱層を作っています。そうした土の特性と現代の技術をハイブリッドして、夏の暑さ、冬の寒さに対応した家づくりをしています。
室内側の土壁
室内側の壁は、柱を通している貫も壁土で覆っています。五枚目の半乾きの写真を見ていただくと、竹で編んだ小舞を芯にして、平に塗られていることがよくわかります。室内側はこの壁によって、守られているのです。
人類に寄り添う漆喰壁
この後、土壁の上に、これも自然素材の漆喰を塗ります。石灰を主成分にする漆喰は古代メソポタミア文明や聖書の中にも出てくる素材です。日本でも古い城郭や寺院でも用いられた素材。日本の特徴といえば、すさ(麻素材)や海藻のりを混ぜているのが特徴だそうです。西洋建築の漆喰はカチッとしたかたい雰囲気ですが、日本建築の漆喰壁は優しい雰囲気なのは、そうした違いからかもしれまっせんね。
冷気と暖気を蓄える土壁
施主さんによれば、蓄熱性は欠点でもあり、利点でもあるそうです。毎日暮らしてるぶんには冷暖房でちょうど良い温度に壁がコントロールされるのですが、数日留守にすると、温まるまでにも、冷えるまでにも数時間かかるほどの蓄熱性があるそうです。エアコンなしでも考えたそうですが、エアコンとの相性も良く、現代技術を活かす建物だそうです。人と暮らす時に発揮する、環境を整える土壁の力と言えるかもしれませんね。
壁土の調湿効果
もう一つ、土壁の利点は壁土が呼吸して、調湿してくれるということです。これも施主さんによると、雨が続く梅雨、部屋干しをしても部屋がジメッとすることがないそうです。適度に漆喰と土壁が呼吸しているのです。
シックハウス対策
シックハウス症候群という言葉を聞いたことありませんか?お子様のアトピーや大人でも、家にいるだけで、肌が荒れ、ひどい人は吐き気や頭痛を訴えるそです。実は、いまの家にはその対策のために、常時換気する換気扇が義務付けられています。新建材に含まれる溶剤が原因です。もともと自然素材の、土壁の家はその対策になると言われています。実際、ある施主さんはその対策のために、土壁にしたいと相談にいらっしゃいました。
懐かしさを思い起こさせる家
最大の利点は、私たち生き物の心に働きかける優しい素材だということです。杉の木と土壁、どちらも自然の恵みです。だからなのか、土壁の家に入ると懐かしさを覚え、安らぎを感じるという人が多いです。大地に包まれたような優しさ。それが最大の土壁の家の良さだと思います。
ユーチューブでも解説してます
担当編集部のYouTubeのあさりおんチャンネルでは、リモートオープンハウス映像の5:30あたりから、工事の様子を紹介しています。ご覧くださいね。
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